「ゆったりとした時間」が流れる。ダブルワークだからこそわかる、それぞれの特徴がありました。

祖母の逝去をきっかけに介護の仕事に興味を持ち、他社の特別養護老人ホーム(特養)に介護職として新卒入社した豊島さん。18年のキャリアを活かし、現在特養と有料老人ホーム『ラ・メゾン高槻』でそれぞれ週2回ずつダブルワークをされています。豊富なキャリアを持つ豊島さんに、それぞれの施設の特徴などを伺いました。

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目次

モチベーションの原動力は、「お年寄りが好き」ということ。

これまでのキャリアと、特養の特徴を教えてください。

「一人ひとりに合ったケア」に魅力を感じ、ユニット型の特養を就職先に選びました。立ち上げ段階から加わることができ、新しい発見がある環境で働きながら18年が経ちましたね。フルタイムの正社員として勤務していましたが、子どもを授かったことをきっかけにワークライフバランスを考え、パートに移行して現在に至ります。

特養の特徴は「看取り介護」です。利用者様とともに過ごす中で距離が近くなり、家族のような関係性になります。そのため、何回経験しても看取りに“慣れる”ということはなく、さみしさや喪失感がこみ上げてきます。一方で、深く関わるからこそ「やりがい」にもつながっていますね。特養の現場では、今日できることが次の日に可能とは限りません。だからこそ1日1日を大切に過ごすことができますし、その中での「ありがとう」の言葉の価値は重く励みになります。

介護福祉士の有資格者だと伺いました。その上で現場にこだわる理由を教えてください。

「お年寄りが好き」というシンプルな理由です。長く介護職をしている中で「この仕事を選んで良かった」としみじみ感じます。また、私のマインドやスタイル的に、現場から離れると利用者様と距離ができてしまうような気がするのも、現場にこだわる理由のひとつですね。利用者様の食事やお風呂、排泄の補助など生活全般をサポートし「その人らしい生活」を送れるように寄り添ってサポートするのがミッションであり、それはどの現場でも同じだと考えています。

過去に「介護の仕事は誰でもできる」という理由で入ってきたものの、現場に出て「無理だ」と辞める方を少なからず見てきました。「お年寄りが好き」や「だれかのために頑張りたい」という芯がないと続かない仕事だと思っていますね。

ダブルワークを選ばれた理由はなんでしょうか?

ずっと特養だけで働いてきたので「有料老人ホームなど、他の施設はどんな感じなのだろうか」と興味を持っていました。そんなときに、専門学校の同級生から「気分転換にフラっと遊びにいく感覚で来てみませんか?」と声をかけてもらったのが、メディエイトで働き出したきっかけです。迷っていた気持ちがスッと楽になり、背中を押してもらえました。

今年の2月から『ラ・メゾン高槻』で働き始めたのですが、初日から歓迎モードで受け入れてくれたので、ありがたかったですね。皆さんとてもあたたかい人ばかりで、わからないことは丁寧に説明してくれるので、ストレスは全くなく、特養もメディエイトも同じくらい楽しく働くことができています。

ダブルワークだからわかる、異なる時間の流れ方と空気感。

特養と『ラ・メゾン高槻』の違いはありますか?

時間の流れ方が大きく違いますね。たとえば入浴だと特養の場合、2時間に10名の利用者様を介助するので効率を大切にしながら業務を進めています。『ラ・メゾン高槻』では1時間かけて1名に対応するので、お話をしながらゆったりとした時間を過ごすことができるため、大きな心のゆとりがありますね。また、特養だと「要介護3」からのご入居になるので、どうしても「ご自身でできないことが多い」状態のため、介助がメインになります。

有料老人ホームの『ラ・メゾン高槻』だと、要支援の段階から利用されるので自分のしたいように行動したり、会話をしたりできる方が多く、極端な言い方をすれば「お友だちとお話をしに来た」ような感覚です。それぞれ施設の特色は異なりますが、与えられた状況の中で利用者様と大切な時間をつくることを意識してます。

利用者様とどのようなお話をされているのですか?

昔の話をしていただくことが多いですね。「戦時中はこうだったんだよ」といった内容を教えていただくこともあります。向こうからどんどん話しかけてくださる方もいれば、寡黙なタイプもいらっしゃいますね。だんまりが続く方のときには、私がずっとおしゃべりしているケースもありますよ(笑)。ただこの場合でも、実は決して一方的に話しているわけではなくて、語りかけることで心を開いていただけるように努めています。本質的なコミュニケーション能力が求められる仕事だと日々感じますね。

お話を伺っていると言葉の端々に「プロとしての矜持」を感じます。利用者様との関係構築において秘訣はありますか?

人間関係を紡ぐ上で、1回や2回程度のお付き合いでは難しいと考えているので、徐々に間合いを計りながら距離を縮めていくイメージですね。中には頑なに「お風呂に入りたくない」「ご飯を食べたくない」とおっしゃる方もおられます。そんなときこそプロとしての腕の見せどころだと思うのです。「どういう言葉をおかけすればいいのか?」「どんな風にすればOKをいただけるのか?」を徹底して考え抜き、行動に移します。これを「楽しい」と思える方が、介護職に向いているのではないでしょうか。ただ、「どうしてもやりたくない」ということについては、無理強いはしません。「お願いすれば動いていただける」のか、「何がなんでも嫌」なのかを判断する“みきわめ”は、個人の考えを尊重するために非常に重視していますね。その価値観はプロとしてのプライドだと思います。

18年間、特養で培ってきた「気づき」などのノウハウを若手に伝えていきたい。

これまでの経験は、『ラ・メゾン高槻』でどのように活かされているでしょうか?

日々の仕事で大切にしているのは「気づき」ですね。利用者様と関わる中で、「ちょっとした変化」にも敏感に気づけるように心がけています。たとえば「いつも元気な方なのに、今日は物静か」「普段はいつも目を覚ましているのに、ずっと寝込んでいる」という細かいことへの「気づき」は年数を経たからこそ身についたものなので、『ラ・メゾン高槻』でも活かし、周りに伝えていきたいと思っています。

「気づき」とは、具体的にはどのようなことでしょうか?

たとえば「話すことが難しい」という方であっても、何かしらのサインが出ているのでそれを感じとるスキルですね。ただ、それを難しく考えすぎると行き詰まってしまうので「楽しく介護をする」ことに重きをおいています。特に看取りの場面では、苦痛を取り除いたり、やわらげるための話術や技術は必須です。そして、そのポイントを「辛い」ではなく、「やりがい」と感じられる方でなければ、「気づき」を得ることは難しいと思います。

今後、メディエイトでやりたいことを教えてください。

キャリアを積んできたからこそ身に付けられたノウハウや、「気づき」などを若手にお伝えしたいですね。また、『ラ・メゾン高槻』は穏やかで人当たりの良い方々ばかりですが、社会全体での一般論として「人間関係が嫌」という課題を抱えている介護施設は多いと思っています。「仕事が向いていない」といった理由ならしょうがないのですが、「人間関係」で辞めるのはもったいないので、率先して「働きやすい人間関係づくり」に役立ちたいです。私自身、新卒で入社したときに先輩から学ばせてもらいました。それを自分なりにアレンジして伝え、若手育成の一助になれればと考えています。